「自己実現」と「自我実現」
このふたつの違いは、わかりますか?
実は、「自己実現」は、スイスの精神科医・心理学者であるユングが考えたもので、彼は
『人生の前半は「自我実現」を目指し、後半に「自己実現」に取り組むのだ』
と言いました。
私がみなさんの相談にのっている感覚だと、30歳台~40歳台頃に、
この「自我実現」から「自己実現」へのコーナーを曲がる人が多いなと感じます。
(個人差で多少前後はあると思いますが)
ちなみに、世界中で大ヒットした映画「アナと雪の女王」や主題歌の「LET IT GO」は、
いままで「自我実現」っぽかったディズニー映画が、
それを脱皮してついに「自己実現」モードにシフトした感じがします。
それが故に、多くの人の無意識がグイグイ反応してしまい、
最速でウォルト・ディズニー・ジャパンの歴代興行収入No.1の座に輝いたのかもしれませんね。
ちなみに、大ヒットしたジブリ映画を振り返っても、同じことが言えるような気がします。^^
これを読んでいる人も、自分自身が気付いているかどうかは別として、
自我実現から、無意識と共に歩む「自己実現」に入ってきている人はたくさんいるはずです。
さて、
その人生の前半に目指す「自我実現」と、
人生の中盤から目指していく「自己実現」の違いは何でしょうか?
ユングいわく「自我実現」とは、「社会的に評価されるようなこと」
分かりやすく言うと、
【やると決めて、それができた!→みんながすごいと言ってくれたり、自分も達成感がある→自分を褒められる、認められる】
そんな感じが、自我実現モード。
「意識的・理性的に予想していた(意図していた)成功や実現を得ていく」とか
「(目に見える形で)何かできたら、自分を認められる」というのは、
自我実現的といえます。
それに対して、「自己」とは、意識だけでなく、無意識も含んだものを意味します。
ですから、「自己実現」というのは、
潜在意識や無意識というわけのわからない要素が突入してきますので、
思い通りにいかないことも増えます。
え?自己実現って、やりたいことを実現することではないの?
と思うかもしれませんが(それが普通の反応かもしれません)
人生中盤以降で取り組む、ユングのいう「無意識と共に歩む自己実現」とは、
【どうなるかを決めて、その通りに実現させてナンボ】(自我ワールド)
という世界から
【どうなるかわからない世界も、自分の中に取り込んで統合していく】(自己ワールド)
という世界になってくるという意味があります。
でも・・・いままで、どうするか決めて、結果を出したら自分を認めてきた、
コントロール好きの「自我」にとって、
どうなるか分からず、訳も分からず、成果が見えないというのは、
コントロール不可能ですから、ストレスフルで、怖いものです。
そうなると、自我くんにとって、自己ちゃんは脅威になり、必ず、自我くんは抵抗します。
「わけのわからない事とか、どうなるかわからない世界を取り込むなんて、振り回されるし嫌!」
「そんなの不安で耐えられない」
「成果が見えなかったら、どうやって自分を評価するの?」
「成果がなければ、誰も認めてくれないんじゃないの」
そんな思考の自分は、ヤングな自我実現モード。^^
私に関していうと、「出産後、人生が、一気に自己実現ワールドにシフトチェンジしたな~」と感じています。^^
自分がどうしたいか?を実現して充実感を感じていた世界
(ヤングな自我ワールド)
から
赤ちゃんの都合で、次の瞬間どうなるかわからない部分を引き受けて統合していく世界
(自己ワールド)
を、グイグイ育てていないといけなくなったわけです。
例えば、仕事があっても、
熱を出したのでお迎えに来てくださいといわれたら、お迎えにいかないといけない。
仕事があっても、朝熱を出したら、預け先をなんとかしないといけないが、なんともできないと、仕事にいけない。
ヤングな自我ワールドからしたら「なんでこうなるの!」「ありえない(涙)」なわけですが、
でも、自己ワールドからすれば「人生、そういう事もあるよね」「受け入れ手放すしかないね~」です。
そんな、
「どうなるかわからない部分を引き受けていく自分(人生)を評価する」」
「目に見える成果」でなく、目に見えない部分つまり
「自分の内面がその現実にどう反応したか?」で自分を見つめていく」
という世界は、成果主義の自我くん(つまり大半の大人)にとって、(仕事でいえば)
「仕事で、目に見える成果を出せなくなる事を、評価する」くらい、難しい事!と言えます。
自己ワールドでは、自我や理性でコントロールできたものが、出来ないことが増えますので、
働いてきた女性の多くが、出産後に、アイデンティティをグラグラ揺らされるのは、そういう事なのかもしれません。
京大の名誉教授であり心理学者である河合隼雄さんは、
「自己実現とは、自我の崩壊とスレスレのところにある」
「子育てほど、面白い自己実現はないかもしれない」
「自己実現とは、一般的に評価されるような事とは違う、場合によっては、途方もない事が起こる可能性がある」
とおっしゃっていますが、^^子供がいてもいなくても、
間違いなく30~40代以降で、その「自己実現」へのターニングポイントはやってきますので、安心してください(!?)。
そして60~70代以降くらいになると、どれだけあがいても、自己実現の嵐です。
ですから、いまから慣らしておくと、楽しく豊かな晩年がやってきます。
何かができた事で自分を評価する自我実現モードだけで突っ張ると、
人生の最期は昔はできたことが、(生物学的に)できなくなる事が増えるわけですから、
ものすごく苦しく悲しくなってきます。
そして、どちらモード(ワールド)かによって、
自分の仕事の仕方も、パートナーとの関係の作り方も、部下や親子の関係も、大きく変わるはずです。
ただ、自己実現と自我実現、これは、どちらがいいとか、悪いというわけではありません。
たとえるなら、自我が「陽」だとすると、自己は「陰」とでもいいましょうか。
決めた事をコントロールして達成していく「陽」と、
予想外の事をありのまま受け入れコントロールを手放していく「陰」。
この両方が出来るようになった人の、しなやかさというか強さは、本物です。^^
そして、この陰陽が統合されると、あらゆる場面に、中庸感、
つまり本当の安定感とか、ありのままの安心感、が訪れる気がします。
そんな、しなやかさ・強さを育てながら、人生の後半を過ごすのが「自己実現」だとするならば、
わけのわからないことや予想外の事に満ちてくる「自己実現ワールド」は、なかなか素敵ワールドかもしれません。^^
大ヒットする映画は、大抵、自己実現的なエッセンスを含んでいる気がします。
そう思うと、人間は深層心理で、無意識に
ユングのいう「自己実現的なエッセンス」を強く望んでいるのかもしれません。(^^)
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