最近では、断捨離に始まり、「物を捨ててスッキリしよう」というのが、ブームですね。
ただ「物を捨てる」というのは、心理的に、とてもパワフルな行為。
だからこそ、子育てでよく見る「~~しなかったら、~~捨てるよ」という場面。
実は「捨てる事」は、使い方次第で、心理的に毒にも薬にもなるのですが・・・
というわけで、今日は特に「捨てる」に関連する約束について、心理カウンセラーの視点から書きたいと思います。「約束」には2種類あります。
●プラスの約束
「仕事(勉強)で成果を出したら、~~しよう」「頑張ったから、美味しいものを食べにいこう」というような、プラスの事に繋がる約束。
●マイナスの約束
「仕事で成果だせなかったら、やめてもらうよ」「片付けないと、~~を捨てるよ」「食べずに遊んでいるなら、もう(ごはん)片付けるからね」というような、マイナスの事に繋がる約束。
この後者のマイナスの約束は、仕事だけでなく、家族の中(親子や男女・夫婦間)でも、無意識によく使われるものです。
しかし、このマイナスの約束。
言ったけど、毎回守られない場合どうなるかというと、「そう言っても、どうせ、やらないでしょ?」と思われて効果はありません。次から同じことを言っても、もう信用されなくなります。
「それで、いいですか?」と聞くと、大抵の大人は「それはよくない」「言ってもやらないと、信頼されなくなるはず」「やはり約束は守らないと効果も意味もないのでは?」
と言います。確かに、そうですよね。
だから、大抵の場合「もし捨てるといったら、捨てるべき」という結論になる大人が多いと思います。
さて、それではここで、ある場面をイメージして下さい。
あなたには、非常にお気に入りの靴(履きやすいし、どんな服装にも大抵あって、おしゃれな靴)があり、それをよく履いています。
あなたの母(または配偶者や恋人)は、いつもきちんと靴を揃えなさいと注意するものの、すごく疲れていると、あなたは時々やりません。
母(パートナー)はしつこく言ってきます。
「今度そのまま揃えず脱いであったら、捨てるよ。ねえ、わかった?わかったの?」
あなた(疲れているのでイライラして)「もう、わかってるって!」
そしてある日、最近の激務でヘトヘトに疲れて帰ったあなたは靴を脱いだまま(揃えず)部屋に行ってそのままダウン。しかし翌日の午後、あなたがそのお気に入りの靴で出かけようとしたら、なんとその大好きな靴が見当たりません。
あなた「あれ?私の靴が無いんだけど」。
母(パートナー)「ああ、捨てたよ」
あなた「はあああ?」
母(パートナー)「だって、捨てると約束したでしょ」
ここで・・・
私が「あなたは靴を捨てた、お母さん又は配偶者や恋人にどんな気持ちですか?」
と聞くと、
ほとんどの人が「ありえない!」「絶対、許せない!」「まじで、キレます!」と言います。
お気に入りの靴が、朝からいきなりゴミ収集車と共に姿を消したわけで、そりゃ~驚くし、頭くるでしょう。
特に、パートナー(配偶者や恋人)の考える「正しいあり方」でなかったからと、パートナーに靴を捨てらると絶対許せないようです。
「でも、最初に言ったように、約束は守られたわけですよね。これで、信頼高まりましたか?」
というと、みんな口をそろえて、
「高まるはずないよね」と答えます。(はい、高まりました!というのは聞いたことがないかも・・)
ここで、再度、
「それでは、もう一度聞きますが、捨てるというマイナスの約束は守った方が信頼感や人間関係は崩れないのでしょうか?」
と質問すると、見事なほど、みんな最初と違う答えになります(笑)。
これを見ていると、やる側の理性で考えると正しいのですが、やられる側の感情的には許せないというのが、よくみてとれます。^^
実は、この構図、年齢退行療法でも時々見る事例でもあります。
親が、子供の大好きな漫画とかを「~~しないと、捨てるよ」といって、ある日、本当に捨ててしまう。
子供が受けたそのショックたるや、さっきの大好きな靴の例のように、激しくショックで、心が傷ついて、親への怒りと不信感で、いまでも忘れられないほど憎らしく悲しい思い出(思い出すと、涙が大量に出てくる)、というのを、時々見ます。
つまり、マイナスの約束というのは、取扱いがものすご~く高度とも言えるでしょう。
じゃあ、捨てる事やマイナスの約束そのものが悪いのか?というと、私が思うに、捨てる事やマイナスの約束そのものが悪いわけではないと思います。
ただ、使う時に、以下の7つのポイントは抑えるほうが良さそうです。
1)約束するなら、目を見てお互いにしっかり言葉で合意すること
まずは、そもそもお互いが合意した約束だったのか?という点が、大事です。
親子の場合「~~したら、捨てるからね」と親が言っていたものの、子供が「わかったよ」「それでいいよ」とも言ってない場合も多々あり、それは約束ではありません。
また先ほどの靴の例のように、「わかったよ!」と勢いで叫んでも合意してないこともあるので、しっかり目を見て合意しておく事は大切です。
2)何度か猶予がある方がベター
家族やパートナーを見てもわかるように、大人でも3回注意しただけで直ることって早々ないですよね。
人間、そんなに完璧じゃないので、猶予を持つことは大切です。
ちなみに、回数に猶予があると、カウントダウンがあるので、心の準備がしやすいとの声がありました。
3)注意の際は、自分もやりたいわけではない気持ちなのだとアピールする
不信感を持たれやすいことなので、自分もあなたを傷つけようと思ってやっているわけではないという事だけは、理解してもらうことが大切です。
「あと2回注意したら捨てないといけないけど、捨てるの辛いなぁ」
「あと2回遅刻したら、あなたを解雇しないといけないけど、私は、そうしたくないんだよなぁ」
4)脅しに使わない
「○○(苦手な食べ物)を食べなかったら、△△(好きなもの)捨てるよ」
「勉強しなかったら、漫画捨てるよ」
というような脅しに近い形で親に物を捨てられ、その時を境に、親への気持ちが大きく不信感へと変わる事例を時々みます。
大人でも、嫌いな食べ物を食べなかったせいで、パートナーに大切な物を捨てられたら、どうか思うか?
例えば、自分がやる気がない時に何か(例えば料理)をしなかったので、大切な仕事道具を捨てられたらどうか?
などをイメージしてみて、自分も絶対嫌だと思うような使い方は控えましょう。
5)捨てるべきか、しばらく取り上げるべきか?よく考える
物に執着があるタイプと無いタイプで、ダメージは天と地ほど違います。
また本当に大切なものを捨てるのは、捨てられた側にはかなりのダメージになる分、人間関係にダメージもありえるので相当の覚悟も必要。
逆に捨ててもダメージにならない程度のものは、捨てても(物がなくなるだけで)特に大した効果はないのかもしれません(物の捨て損かも?)。
6)なぜできないのか?いつもと違う様子はないか?相手の様子を観察する
大人であれば、まだ「昨日は、めまいがするほど疲労困憊で出来なかった」とか「今日は体調が悪いので、週末やるから!」とすぐ説明や弁解できる部分もありますが、特に言語能力が十分発達してない子供の場合、それが出来ない事も多いもの。
いつもと違う様子だったり、疲れているようだったりした時は、体調が悪いとか、いじめにあった等、なにか重大な事が隠れているかもしれないので、そういう時は、ルールよりそちらのケアを優先しましょう。
7)命や健康に深く関わるものについては、取り上げる/捨てる勇気も必要。
命や健康に深く関わるものについては、理由をしっかり説明したうえで、何度いっても聞かない場合には、断固とした手段が必要な場合もあるでしょう。
こうやってみてみると、なかなか高度にもみえるマイナスの約束。
ですが、シンプルにまとめてしまえば、(大人であれ、子供であれ)
●相手ときちんと向き合ってコミュニケーションすること
●相手をよく観察すること
この2点がしっかり根底にあれば、大体、大丈夫です。
また親子の場合は、しつけもあるので、少しわかりずらくなりやすいのですが、これも男女と同じで、
大人同志で、そのやり方をされたら自分はすごく嫌だなと思うコミュニケーション(やり方)は、親子間でもやめるほうがベターだし、
大人同士であっても、自分がされても、これは仕方ないと思えるコミュニケーション(やり方)なら、親子間でも大抵大丈夫だと思います。
理由や関係性は様々であっても、何がどれだけ大事なのか?その時、その人がどんな状況なのかは、他人には、なかなかわからないものです。
だからこそ、人間関係は、
(自分が思う)正しさ・理屈・ルール > 向き合う事、相手を観る事
になりすぎると、正しかったとしても崩壊しやすいもの。
決まりやルールも、
「人間同士として、(理性だけでなく心で)向き合って、観ようとしたかどうか」
が、人間関係(信頼関係)構築には欠かせないという部分を土台にすると、信頼感も高まりますし、
「捨てる事」や「マイナスの約束」も、もっと効果的に使う事ができるでしょう。(^^)
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